介護福祉施設にかぎらず、人間がある程度集まるといざこざが絶えなくなるのはなぜなのでしょうか。
特養の介護主任をしていたころは、朝から晩までその事について考えていた時期がありました。おなじ目的をもって集まった仲間のはずなのに、A職員とB職員でなぜここまで話がすれ違ってしまうのか…最悪の場合、片方が職場を去ってしまう事もあります。
原因① 価値観の違い
男性と女性、子供と大人、日本人と外国人、これらはそれぞれに「物事を判断する基準」というものが存在し、それこそが価値観です。
「価値観の違いくらい…動物じゃあるまいし、言葉のコミュニケーションでどうとでもなるだろ」
と簡単に考えていました。しかしこの価値観の違いが同僚との間に無駄な軋轢を生じさせ、本来の仕事である利用者様へのケアにまで影響が出てしまうことを考えると、私たちはもっと真剣に考える必要があることに気付きました。
原因②相手への感情的な嫌悪
男性職員と女性職員の違いに「生理的に無理」という言葉があります。傾向として、男性職員からこの言葉を聞くことはほとんどありません(男性職員が常に理論的に考えて行動しているという意味ではないです)。
「私、あの人生理的に無理だから」
これを言われると、周囲や本人はもうどうしようもありません。存在するだけで相手を不快にさせているわけですから。
もちろんその言葉の裏には具体的な理由がある事は理解しています。清潔感が足りなかったり、言葉が威圧的だったり、仕事を怠ける癖があったり…しかしそれらについて話し合う事もなく(改善の余地も許さず)「生理的に無理」と投げ捨ててしまっては、関係そのものを放棄しているのと同義でしょう。
では、どうすればいい?
原因①価値観の違いについて
可能ならば研修会を開きましょう。内容はグループワークがベストです。そして価値観の違いが顕著になりそうな事例(介護に関係なくてもかまいません)を用意し、それぞれに好きなだけ語り合ってもらいます。年齢差、性別差など、価値観が違うであろう職員同士を同じグループにするほうが良いでしょう。
「価値観は違っていて当たり前」という事を少しでも理解していただければ成功です。もちろん一度の研修でお互いの価値観を認め合うことなどありえませんが、例えば感染症や身体拘束の研修の際も、価値観の違いがわかるような工夫をしていくことが大切かと思います。
原因②相手への感情的な嫌悪
難しいのはこちらです。なにせ「嫌悪」という本当ならどうにかして抑えるべき感情を思いっきり出してきているわけですから。正直、打つ手なしにも思えます。しかしこれにも対処法はあります。
それは「時間」です。
そんな悠長なことを…と思われるかもしれませんが、これを忘れて解決を急ぐと管理職も本人も泥沼にはまってしまいます。
例えばAという女性職員が「私はBさんの事が生理的に無理(もちろん「仕事が遅い」などそれらしい理由はおっしゃられると思いますが、要はこういう事です)なので、夜勤は一緒にできません。」と言ってこられたとします。
ここで「そんな身勝手は許されない」など答えてしまっては、火に油を注ぐ状況になる可能性が高いです。
ですから、この場合は「今すぐそのようにできるよう検討します」と伝え、次に「ただしずっとというわけにはいかないから、1か月後までに一緒の夜勤に入れるよう、二人で話合えませんか?」とお願いします。
ほとんどの場合、本人自身もなぜこうまでその方を嫌うのか、気付いていないのです。人が人を嫌うのに誰もが納得する理由などありません。「嫌いだから嫌い」、それだけです。
この方法だとA職員だけでなく、管理職である自分自身にも1か月の猶予を与える事ができます。そして1か月の間にその方の気分が変わる事に賭けるのです。もちろんただ祈るだけでは能がないので、その1か月間、管理職として関係改善にむけてできる範囲で工夫や努力はしてみます。
「職員の対人関係に関する感情的なものは、こちらにはどうしようもないのだ」
という事を理解して受け入れましょう。
その前提がないと、管理職にも本人にもストレスなミーティングを延々と繰り返し、その挙句精神的に疲れ果ててしまう…このような悪循環に陥る危険性があります。職員同士の関係が改善すればまだ悩んだ甲斐もありますが、ほとんどの場合そういった職員は退職していきました。
この記事を読んでくださった方のヒントになればさいわいです。くれぐれもストレスだけは溜めないように…