日々思うこと

大変なのは「現場」だけ?

投稿日:

「相談員やケアマネには現場と違った大変さがある、現場の職員にはわからない。」

「現場はいつも忙しくて大変、相談員やケアマネは座ってばかりでラクそう。」

特養などの介護施設で働いていると、時々こういった愚痴を聞く事があります。「現場とそれ以外の職員、どちらが大変か」という問題について文章を書いてみました。

介護職員を「現場の職員」とするのは、あまりいい表現方法ではないのかもしれません。視野を社会福祉事業全体に広げれば、相談員やケアマネだって完全に「現場の職員」です。また特定処遇改善加算のように、「介護職員」と「その他の職員」でもじゅうぶん意味は通じます。

しかし事業所内の他の仕事(相談員・ケアマネ・事務員等)と比較した際に感じる介護職員の業務の特殊さや危険の度合い、論争が生じているのが事業所の職員間であることなどを鑑みて、私自身も介護職員を「現場の職員」、それ以外の方を「現場ではない職員」と表現することがあります。

現場の職員とそれ以外の職員、すべてに大切な役割があり、お互いを尊重しあって仕事ができている状態が理想ではあります。

しかし賃金や勤務形態の違い、危険な業務の有無などから、職場やSNS上などで「現場とそれ以外とどちらが大変か」という議論がおこる事も少なくありません。

「どちらが大変か」を考える場合、客観的な基準のない「仕事の大変さ」をある程度可視化する必要があります。その際の判断基準のひとつして、私は「年次有給休暇を取得する際の自由度」を用いる事があります。

例えば

「3日間続けて、有給で仕事をお休みしたい。」

「今日の昼から早退したい。」

こんなふうに望んだ時、それが実現できた回数で「仕事の大変さ」を測るのです。

介護職員、施設長、相談員を経験した私の経験則ですが、介護職員の「有給取得の自由度」は他職種に比べて非常に低いと言わざるをえません。

相談員やケアマネ、管理職や事務員は、業務の多くが日程調整可能なものであり、相手がいる仕事でも段取りさえ整えれば「仕事を休む」行為はそこまでハードルが高くありません。しかし「現場」で直接高齢者の生活支援をおこなう介護職員はそういうわけにはいかないのです。

現場で働く介護職員には毎日毎時間「やるべき仕事」が割り当てられていて、それを誰かに肩代わりしてもらわないと勤務から抜けられません。夜勤ともなると他に数名の職員しかいませんから、本人以外の関係のない職員が勤務の交代を余儀なくされます。

例えば相談員の担当者会議のように、「その日は都合が悪いので来週に」といったやり方が通用しないのです。

普通の感覚なら、自分の都合で同僚に迷惑をかけるのは気が引けてしまうはずです。勤務表であらかじめ有給休暇を指定しておくという方法もありますが、それらを踏まえても介護職員の有給取得率はその他職員に比べて低くなってしまいがちです。

私は普段から職員さんに

「有給休暇は事前申請を原則としてください。」

とお願いしています。仕事を休む時は、なるべく他の職員に迷惑をかけない(≒業務に支障をきたさない・サービス利用者に迷惑をかけない)ようにするべきだと考えているからです。

こう言うと

「有給で休むのは権利だ、業務に支障が出ないようにするのは管理職の役割だろう」

と意見されそうですが、それも事前申請による調整の猶予があってこそです。労働基準法や就業規則にも有給休暇は事前申請が原則と記載されています。(労基法での事前とは1日単位で考えます。当日は事前ではありません。)

事前申請のない有給取得を、私は「ドタキャン」と表現します。少し前になりますが、ドタキャンが非常に多い「現場ではない」職員さんがいらっしゃいました。あまりの多さに苦言を呈したところ、

「大丈夫です。仕事に支障は出ないように調整してますから。」

と回答され、私はその職員と自分の考え方のずれを気付かされました。

ドタキャンそのものだけが問題ではないのです。

本当に問題なのは、「たびたびドタキャンしても問題ない程度の仕事しか普段担当していない」事、もっと言えば自分でそれに気づいていないという危機感のなさです。

ましてやそれが一般の職員より多く給料をいただいている立場ならなおさらです。そのような立場にありながら

「私は普段から、急に休んでも誰にも迷惑かからない程度の仕事しかしていません。」

なんて、普通なら申し訳なく感じて言えません。社会人ならば、周囲にそういった誤解を生むであろうドタキャンを「なるべくしたくない」と考えるはずです。

介護職員、看護職員、相談員、ケアマネ、施設長、事務員と、それぞれの仕事にそれぞれの大変さがあります。

しかし自分の賃金水準が「現場」に比べて同等かそれ以上であるにもかかわらず、現場以上に有給休暇が取りやすい(または実際に取れている)職種であるならば、ドタキャンや有休消化をしやすい部署・しにくい部署に分かれてしまっている理由を一度考えてみるとよいのかもしれません。

-日々思うこと

Copyright© ひとにやさしく , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.