以前身体介護のコツを記事にしたことがありました。自分自身で再確認しながら書いていったのですが、その時伝えられなかった「第三のコツ」についてお伝えしたいと思います。
まず前回のまとめですが、第一、第二のコツは「骨」と「重心」です。
そして第三のコツ、もっとも大事なコツなのに割と最近まで気づかなかったもの…
実は、「声掛け」なんです!!
「そんなの当たり前じゃん…」と思われた方には素直に謝ります。でもほんとに、最後の最後まで気づくことができなかったんですよ!!
もちろんそれまで声掛けをしていなかったわけではありません。しかし無言で介助をおこなうと感じが悪いので、「起きますねー」「寝かせますねー」などの形式的なものばかりでした。重要と思っていないので、よそ事を考えているとうっかり忘れてしまう事もよくありました。とうぜんそこにあてる時間も労力も最低限のものです。
気付いたきっかけはTさんという女性の利用者様です。普段Tさんはこちらの声掛けに返事をされず、よい時で目を少し開けてこちらの顔を見る、そんな方でした。もちろんまったくの寝たきりです。
たまたまその日のTさん、最初から目を開けておられたので、「ちょっと抱えますよー(棒)」と車いすからベッド上に移動してもらおうと思った時です。
Tさんが、ちょっとだけ前かがみになったような…抱えていた自分にTさんの「何かしらかの動く意思」のようなものが伝わったのです。
その時はそのまま移乗の介助を終えましたが、それから少しずついろんな事に気付き始めました。
笑顔で挨拶をし、身振り手振りや声掛けで動いてほしいことを伝えると、ほとんど動けない利用者様でも動こうとされます。この「動こうとする」気持ちが、自分の移乗介助を楽にしてくれるのです。
それから自分の身体介護はかなり変化しました。無駄なだけと思っていた声掛けに時間を割くようにして、自分100利用者様0だった寝たきりの方への身体介護が自分99利用者様1になったのです。
「たかが1じゃん」と思われるかもしれません。しかし「1」が「2」になったのではなく、「0」から「1」になったのですから、数値ではあらわせない変化です。
そしてその時初めて、「支援する」という意味を知りました。動こうという意思がある限り、まったく体が動かせない方でも自分たちは支援する事ができます。
たとえたった1でも、それさえあればお年寄りは「主体者」となり、私たちは「支援者」という事になります。
とにかく我流で仕事をしていたため、気付くまで時間がかかってしまったのだと思います。「声掛け」のパワー、ぜひ皆さんにも感じていただきたいです。